もう終わりにしよう。そう決めたのに、朝フロアに入った瞬間、目が探してる。
昨日も決意した。一昨日も決意した。
何回目だよ、この誓い
毎日顔を合わせる相手を、どうやって諦めろって言うの。会わなければ忘れられるけど、明日も会うんだよ。
世間の答えは決まってる。時間が解決します、新しい出会いを探しましょう、意識しないようにしましょう、と。
私は言うよ。意識しないようにするから、消えないんだよ。
忘れようとする努力が、いちばん効かない
考えるなという指示は、必ず考えることになる
今日は見ないようにしよう。意識しないようにしよう。
やってみて分かってるでしょ。逆効果です。
考えるなという命令を処理するには、まず対象を思い浮かべる必要があるので。禁止するたびに、一回思い出してる。
一日に二十回禁止したら、二十回思い出したことになる。忘れる努力が、記憶を強化してる。
職場は、忘れる条件が一つも揃っていない
普通の失恋は、会わないことで薄れていく。情報が入ってこないので、脳が処理を終える。
職場は逆。毎日、新しい情報が入ってくる。
今日の服装、誰と話していたか、機嫌がいいか悪いか。
毎日、記憶が更新される。上書きされ続けるので、古くならない。
つまり職場の片思いは、時間で薄れる仕組みが働かない。ここを理解しないまま、時間が解決すると信じて三年経つ人がいる。
逆の一手、忘れない。理想像だけを壊す
やることは、記憶を消すことじゃない。相手の解像度を上げること。
片思いが続くのは、相手の情報が足りていないから。あなたは見ているようで、実は仕事中の姿しか見ていない。
その空白を、あなたは良い方向に埋めてる。優しそう、丁寧そう、きっといい人。
これを意識的に、別の方向でも埋める。
朝は不機嫌かもしれない。金銭感覚が全く合わないかもしれない。家では散らかしっぱなしかもしれない。恋人には冷たいかもしれない。
根拠はない。当然でしょ、知らないんだから。
でも、あなたが良い想像で埋めてきたのと、精度は同じなんだよ。
理想像が揺らぐと、脳は執着を続けられなくなる。完璧じゃないものに、人は焦がれない。
この方法への抵抗
悪く思いたくない、という気持ちが出てくる。当然だと思う。
その抵抗こそが、執着の本体なんです。理想のまま保存しておきたいという欲求。
そこを守っている限り、三年経っても同じ席で同じ人を見てる。
接触を減らすのが、いちばん効かない
避けると、職場での立場が悪くなる
話しかけない。目を合わせない。近くに行かない。
やりたくなるけど、これは損しかない。
まず、相手が気づく。避けられていると感じて、向こうも距離を取る。仕事に支障が出る。
そして周囲も気づく。二人の間に何かあると思われる。噂の材料になる。
何より、避けている自分を毎日意識することになる。避けるという行為が、相手を意識し続ける作業なので。
逆の一手、接触は減らさず、内容を業務に固定する
話しかける回数は変えない。挨拶も普通にする。
変えるのは、会話の中身だけ。
業務の話だけをして、それ以外を一切足さない。感想も、雑談も、褒め言葉も入れない。
これが効くのは、あなたの中で相手のカテゴリが変わっていくから。
恋愛の文脈で見ていた相手を、業務の文脈だけで扱い続けると、脳の分類が少しずつ移動する。
そして相手の反応も変わる。特別扱いされなくなった相手は、あなたにとっても特別じゃなくなっていく。
避けるんじゃなく、平坦にする。
この一手のつらさ
最初の二週間は、かなりきつい。
話したいことがあるのに飲み込む。褒めたい場面で黙る。
ただ、この飲み込みには終わりがある。三週間くらいで、意識しなくてもできるようになる。
避けるつらさには終わりがないけど、平坦にするつらさは慣れる。ここが決定的な違い。
私が二年半、決意だけを繰り返した話
諦めると決めた日を、何回作ったか
以前、同じフロアの人を二年半好きだった。
何度も諦めようとした。年末に決意して、年度末に決意して、誕生日にも決意した。
やり方はいつも同じ。見ないようにする、考えないようにする、話しかけないようにする。
そして三日で崩れる。目が合った。少し話した。それだけで全部リセットされる。
諦められた日は、拍子抜けするほど普通だった
終わったのは、決意じゃなかった。
たまたま同じプロジェクトに入って、三ヶ月間、毎日近くで働いた。
そこで初めて、仕事中以外の彼を見た。
締切前に苛立って、他の人にきつい言い方をする場面。細かいところに全然気が回らない場面。私が大事にしていることを、雑に扱う場面。
悪い人じゃなかった。ただ、私が二年半かけて作った像とは、全然違う人だった。
その三ヶ月で、勝手に終わった。
情報が入ったら、終わった。それだけの話だった。
近づくことが、割り切る方法だった
私は離れようとして二年半失敗して、近づいたら三ヶ月で終わった。
遠くから見ている限り、理想は壊れない。壊れないから、続く。
職場という環境は、実は近づける。他の片思いより、はるかに情報を取りやすい場所なんだよ。
割り切ると決めた後、実際に何をするか
期限を切らない決意は、決意じゃない
いつか忘れる、そのうち諦める。
この形の決意は、実行されない。締切がないので。
逆の一手、三ヶ月の期限を切って、その間は動く
私が勧めるのは、割り切る前に一度だけ動くこと。
矛盾して聞こえるかもしれない。でも、動かずに諦めた恋は、必ず残るので。
三ヶ月だけ、業務の中で接点を作る。相手の情報を集める。可能なら、業務の外で一度話す。
そして三ヶ月経ったら、結果がどうであれ降りる。
これをやると、後悔が残らない。やることをやって終わったので。
何もせずに諦めた恋は、五年後に、あの時動いていればと再生される。動いて終わった恋は、三ヶ月で片付く。
それでも動きたくない場合
相手に恋人がいる、既婚である、立場的に無理がある。
その場合は動かない。かわりに、情報を集めるほうに徹する。
どんな人なのか、何を大事にする人なのか。知れば知るほど、理想像は崩れていくので。
別の出会いで上書きしようとして、失敗する理由
実在は、想像に勝てない
新しい人に会えば忘れられる。よく言われる方法。
でも、新しく会う相手は実在の人間です。欠点が見えるし、返信が遅い日もある。
それを、あなたが脳内で完璧に仕上げた同僚と比較することになる。
勝てるわけがない。条件が違いすぎるので。
上書きが失敗するのは、あなたの気持ちが弱いからじゃない。比較の土俵がおかしいだけ。
逆の一手、比較をやめるために、先に理想を壊す
順番が逆なんだよ。
新しい出会いを探す前に、今の理想像を壊す。
壊れた後なら、実在の人と実在の人を比べられる。そこで初めて、新しい相手が候補になる。
職場という条件を、使い切る
異動や退職を待たない
相手が異動すれば忘れられる。転職すれば楽になる。
そう思って待っている人がいる。でも、その日は来ないかもしれない。
そして環境が変わっても、情報が足りないまま離れると、理想像が保存されたまま残る。
何年も忘れられない人になる。一度しか会っていない相手を五年引きずる仕組みと、同じなので。
逆の一手、離れる前に、知り切る
今の環境にいるうちに、相手を知る。
仕事の仕方、機嫌の悪い時の態度、価値観、雑談の中身。
知ることは、近づくことじゃない。終わらせるための作業として、意識的にやる。
これができるのは、同じ職場にいる今だけなんだよ。

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